「戦後70年にあたってのJEA声明」を採択しました
2015年6月1日~3日に開催された第30回JEA総会で、以下の「戦後70年にあたってのJEA声明」を採択しました。
戦後70年にあたってのJEA声明
私たち日本福音同盟(以下JEA)は、主である神の御前で、また、生きている人と死んだ人とをさばかれるキリスト・イエスの御前で、その現れとその御国を思って、戦後70年を迎えた日本と世界に福音を証し、平和を造り出す者となるため、以下のように声明します。
第二次世界大戦後の日本において、聖書を誤りなき神のみことばと信じる、私たち福音派キリスト教会が結集した原点には二つの軸がありました。すなわち聖書の規範性と基本教理をないがしろにする自由主義神学との対峙、そして戦時下でイエス・キリストだけを主とする信仰告白を弾圧懐柔した天皇制・国家神道体制を標榜するナショナリズムとの対峙です。
1959年の「日本宣教百年記念聖書信仰運動大会宣言」は「聖書、即ち万物の創造者であり、又人類歴史の支配者である神の誤りなき御言葉によって、我らは…次の宣言をなし…証しの言葉とする。」として、以下のように述べています。
「一、我らは…一切の偶像崇拝を廃棄すべき聖書の命令に応えることに於いて、欠けたところの多かったことを神の前に反省し、痛切なる悔改めを告白する。
二、我らは聖書によって、国家と教会が、共に神の主権の下に立つ、二種の相異なる正当な秩序であることを認め、政教分離の原則に基づき、信教自由の基本的人権を保護する現行憲法を、その点に関して聖書的と認めて支持する。
三、我らは我が国に於いて、右の政教分離の原則が無視され、信仰の自由が甚だしく圧迫された過去にかんがみ、今後国家行事の中に、宗教的要素の混入することのないように監視し、かかる過誤の排除に積極的に努力する。…
以上の三点を貫いて、国家と教会との正しいあり方のために、我らは一つの聖書信仰によって協力して信仰のよき戦いを戦うことを誓う。」
翌年の1960年、この流れの中から、後にJEAの設立三団体の一つとなる日本プロテスタント聖書信仰同盟(JPC)が成立し、特別委員会として聖書翻訳委員会と伊勢神宮対策委員会が設けられました。前者の働きを受けて1961年に新改訳聖書刊行会が設立され、1970年に新改訳聖書が出版されました。後者は1967年以降の靖国神社国家護持反対運動につながっていきました。そして1968年、「聖書はすべて誤りなき神のみことばであり、信仰と生活の唯一の基準である。」(JEA規約第3条1)との信仰によってJEAが設立されたのです。
私たちJEAは、1995年の「戦後50年にあたってのJEA声明」の中で、第二次世界大戦時下に、皇国史観のナショナリズムに迎合して神社参拝という偶像礼拝を犯し、皇国の道に従うことを第一としてアジア諸国への侵略加害に加担したキリスト教会の罪責の悔い改めと謝罪を表明しました。2005年の「戦後60年にあたってのJEA声明」では、その土台の上に第四回日本伝道会議(2000年)の「沖縄宣言」を引用し、和解の福音の使者として、遣わされた所で福音を宣べ伝え、平和を造り出す者となる決意を言い表し、それぞれの場所で取り組みを進めてきました。しかしながら、この10年の歩みを振り返るとき、それらの言葉の内実を問い、具体化することにおいて十分であったとはいえません。そのことを率直に認め、主の御前に悔い改めを新たにします。
戦後70年を迎え、戦時下の生の証言を聞くことが難しくなりつつある今、自国中心の歴史修正主義が台頭し、アジア諸国の人々へのヘイトスピーチ問題などにみられる民族差別が顕在化しています。国旗・国歌の強制、一部の閣僚による神社参拝の常態化など、信教・思想の自由を脅かし、天皇制・国家神道体制の復活につながるような動きもみられます。また特定秘密保護法制定、沖縄の米軍基地問題、閣議決定のみによる集団的自衛権行使容認の流れの中で、戦後日本のあり方を大きく変更しようとする安全保障関連法案が国会で審議されています。キリスト教界においては、戦前と同じような日本的キリスト教を標榜し、皇国史観のナショナリズムに迎合するような動きが再びみられるようになってきています。
このような中で、私たちJEAは、戦時下における日本の教会の罪の歴史と悔い改めの決意を次世代に伝えます。そして戦後日本の福音派キリスト教会結集の原点を改めて心に刻み、現在の日本において、聖書を誤りなき神のみことばと信じる聖書信仰のゆえに、神の似姿として創られた人間の尊厳といのちを脅かし、敵意と争いを生み出すあらゆる力に抵抗し、イエス・キリストの十字架にあらわされた神の愛を人々に伝えると共に自ら生き、家族・地域・社会でその愛による平和と和解が実現していくように努力します。また、国家と社会に対して聖書の規範性とイエス・キリストの主権性を告白し、信教・思想の自由を守り、イエス・キリストだけを主とする信仰に生きることを通して、国家と教会の正しい関係を指し示します。そして、聖書信仰に立つアジアと世界の諸教会と連帯・協力してキリストの福音を世界に満たすと共に、なおも諸外国との和解を妨げている課題に取り組むことを通して和解の福音を生き、さまざまな虐げの中にある人々、社会的弱者、小さくされた人々と共に立ち、平和を造り出す者となることをここに表明します。
「見よ。ひとりの王が正義によって治め、首長たちは公義によってつかさどる。」イザヤ書32章1節
2015年6月3日
日本福音同盟第30回総会
理事長 中台孝雄
総会議長 梅田登志枝